2050年のCCS、年間貯留量1.2億~2.4億tへの長期ロードマップ

経済産業省のCCS(二酸化炭素回収・貯留)長期ロードマップ検討会で2022年5月、中間とりまとめ(案)が示された。CCSの貯留量として、「2050年時点で年間1.2億~2.4億t」(図表1)が目安になり、2030年からCCS事業を開始する場合、CO2圧入井1本当たりの貯留可能量を年間50万tとして、2050年までの20年間で毎年12~24本ずつの圧入井を増やしていく必要がある。

一方、2030年までにCCS事業を開始するには、圧力井の建設に約4年かかることを勘案すると、2026年までに最終投資決定、2023年にFS(フィージビリティ・スタディ)や試掘の機材調達の着手が必要になる。

図表1 2050年に向けたCCS貯留量の目安

2050年の年間貯留量1.2億~2.4億tは、国際エネルギー機関(IEA)の“World Energy Outlook 2021”における各シナリオ(Net Zero Emissions by 2050、Sustainable Development Scenario、Announced Pledges Scenario)で、2050年の世界全体の所要CO2回収量として示されている38億~76億tに、直近の世界全体のCO2排出量に対する日本の排出量割合3.3%を乗じた数字(出所)経済産業省

 

政府による建設・操業コストの全額負担が必要

上記を前提に、中間とりまとめ(案)では、2030年までのCCS事業開始に向けた環境整備を政府としてコミットし、具体的アクションを随時、実施することがうたわれた(図表2)。具体的アクションは以下の通り。

国内法整備: 2022年内にCCS事業に関する法整備に向けた論点(事業者の地下利用の権利、法的責任の明確化、周辺海域における貯留層の適正管理、CO2の海外輸出に関するロンドン議定書の担保)を整理する。その上で、可能な限り早期にCCS事業に関する法整備を行う。

コスト低減:研究開発や実証を引き続き実施し、CCSのバリューチェーン全体(分離・回収、輸送・貯留)でコスト低減を図る。官民で将来目指すべきコスト目標を設定して、取り組み(低コスト型分離回収技術の開発、液化CO2船舶輸送技術の開発・実証、CO2圧入技術の開発・実証、海外機関との連携による大規模貯留実証)に反映する。

政府支援:事業者と連携し、国がCCSの適地調査(2022年3月末までに、11地点で約160億tの貯留可能量を推定)を実施するとともに、既存データを含め、国保有の評価データを開示する。また、バリューチェーンの建設・操業段階、商業化段階における欧米の補助金制度や支援措置を参考に、政府支援の在り方を検討する。

なお、こうした政府支援の検討に当たっては、分離・回収事業者、輸送・貯留事業者に生じるCCS実施のCAPEX(建設コスト)とOPEX(操業コスト)が、現状では単純な追加コストとなり、CCS事業に取り組むインセンティブがないことに留意が必要である。つまり、2030年までのCCS事業開始に向けた事業環境の整備で、政府は少なくともCAPEXとOPEXの全額を負担する必要がある。

国民の理解増進:国や地方自治体、企業などが一体となり、2050年カーボンニュートラルに向けたCCSの必要性を国民に発信し、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)実施による自治体への経済波及効果を示しながら、国民やCCS実施地域の住民の理解増進を図る。

海外事業推進:化石燃料に依存するアジア新興国などのカーボンニュートラルに向け、アジアCCUSネットワークを通じた知見共有、海外CCS事業へのリスクマネー供給、二国間クレジット制度(JCM)におけるCCSクレジットのルールメーキングによって支援する。また、国内で発生したCO2を海外に輸送・貯留するための仕組みについて、CCS事業に関する国内法に盛り込む。

図表2 具体的アクションのロードマップ

(出所)経済産業省

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