再エネ全体36~38%(太陽光15%、風力6%)、エネルギー基本計画の電源構成比

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で2021年7月21日、“野心的な目標”とする2030年の電源構成を含むエネルギー基本計画(素案)が示された。総発電電力量は9300億~9400億kWh。このうち、再エネは3300億~3500億kWhで36~38%を占める。7月13日に担当官庁から示された追加導入量3126億kWhに、200億~400億kWhを上乗せした。

さらなる追加を図るための施策として、①系統増強等を通じた風力の導入拡大(長距離海底直流送電や蓄電池の導入拡大によって、北海道を中心とした風力発電導入量の拡大4GW)、②地域共生型再エネ導入4.1GWの推進やさらなる再エネ促進区域の設定、③民間企業による自家消費促進、④現行ミックスの達成に向けた施策強化(地熱と中小水力の強化)――を挙げている。

エネルギー基本計画(素案)は、2020年10月に宣言された「2050年カーボンニュートラル」、2021年4月に表明された「2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%減」を受けた内容で、2013年度のCO2排出量12.35億t-CO2から2030年度に約6.8億t-CO2への削減を目指す。今後、精査して今秋の閣議決定を目指す。

再エネと火力の比率は逆転に至らず

電源構成について、2019年実績、2030年の現行目標、2030年の素案(途中段階)の構成比を下図表の通り比較した。素案では、再エネが36~38%、水素・アンモニアが1%、原子力20~22%、火力が41%(LNG20%、石炭19%、石油等2%)となっている。2015年策定時に比べて再エネの比率が6割増加しているのに対し、火力の比率が56%から41%へと大きく低下している。再エネの比率は火力にわずかに及ばない。原子力の2019年実績は6%に落ち込んでいるが、2030年の目標値は2015年策定時と変わりない。

図表1■電源構成比の比較

(出所)経済産業省の資料を基に作成

図表2■電源構成比の比較

(出所)経済産業省の資料を基に作成

洋上風力の2030年の設備容量は3.7GW

2030年の再エネ導入目標の内訳をみると、太陽光の比率が7%から15%、風力が1.7%から6%へと伸び、両者で全体の伸び14%のうちの12.3%を占めている。太陽光については、太陽光発電協会が野心的目標として「2030年125GW(約1530億kWh)」を掲げている。洋上風力については、国の成長戦略実行計画で2030年までに10GWの事業案件形成を目指しているが、素案における2030年時点の設備容量は3.7GWにとどまっている。両者の今後の上積みが期待される。

図表3■素案における再エネの構成内訳

(出所)経済産業省の資料を基に作成

太陽光が発電コスト最安となる可能性

エネルギー基本計画(素案)では、1kWh当たりの電力コストを、現行ミックス(2015年)の9.4~9.7円から9.9~10.2円に上昇すると見込んでいる。素案の公表に先立って、経済産業省発電コスト検証ワーキンググループは、原子力、太陽光、風力、石炭、液化天然ガス(LNG)など15種類の各電源の発電コストを2020年と2030年に分けて分析している(下図)。発電所を新設した場合の建設や運営にかかるモデル費用で、送電網への接続費などは含んでいない。風力や太陽光を増やすと、天候によって発電できない事態に備える火力発電所をバックアップ用に確保するなどのコストもかかるが、こうした要素も今回の試算には織り込んでいない。

分析の結果、太陽光の2030年時点の発電コストが1kWh当たり8円台前半~11円台後半と、原子力(11円台後半以上)より安くなるとの試算を示した。原子力は2015年の試算では、2030年時点で10.3円以上としていた。今回は安全対策費を上積みした結果、11円台後半以上に上昇している。火力(LNG、石炭)も燃料費やCO2対策費を考慮して上昇傾向。洋上風力は2030年時点でなお26円台前半であり、他の電源に比べると高い。

図表4■2020年と2030年における各電源コスト比較

(*)例えば、太陽光発電の2030年時点のコストが1kWh当たり「8円台前半~11円台後半」と資料に記載されているが、図中では「8.0~12.0」の範囲を帯で示している。(出所)経済産業省の資料を基に作成

 

 

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