自動運転車両が普及する近未来の社会では、インフラの概念も変化する。これまでは、道路、橋、トンネルといったハードインフラが主役だったが、今後はデジタル地図など、ソフトインフラの重要性が増す。「パソコンはソフトがなければただの箱」と言われたように、道路もデジタル地図と連動していなければ、「選ばれない道」になるだろう。そんな未来に向かうための投融資事例が相次いでいる。
高精度3次元地図データの整備に40億円
ダイナミックマップ基盤(東京都中央区)は6月、三菱UFJ銀行や商工組合中央金庫などとの間で、シンジケーション方式の実行可能期間付きタームローン契約を結んだと発表した。組成金額は40億円。調達した資金は、自動運転やスマートシティのための高精度3次元地図データの整備に充てる。
高精度3次元地図データは、日本で高速・自動車専用道路3万2000㎞、米国で26万マイル(約41万8000㎞)を取り込んでいる。今回の資金の使途は、日本国内のカバレッジを7万8000kmまで拡大するための計測・図化・システム構築などとなっており、2022年度までの業務が対象だ。
地図の整備は、高精度3次元地図データ搭載車の安全運転や無人運転に資する。この融資は、ソーシャルローンの原則に適合するとの評価を日本格付研究所から取得。融資団には、山陰合同銀行、名古屋銀行、八十二銀行も名を連ねた。
ダイナミックマップ基盤に関しては2019年、投資会社のジャパン・インフラストラクチャー・イニシアティブ(東京都千代田)が上限20億円の出資を発表している。ダイナミックマップ基盤の既存株主であるINCJや三菱電機との共同出資だ。
トヨタは米国の次世代道路情報解析会社を買収
トヨタ自動車の子会社であるウーブン・プラネット・ホールディングス(東京都中央区)は7月、米国のCARMERAの買収に合意したと発表した。CARMERAは、次世代道路情報解析を得意とし、車両のクラウドソーシングとリモートセンシングを利用して、道路や道路付属物の変化を高解像度で捉えるサービスを提供している。
買収完了後、CARMERAのチームはウーブン・プラネットの事業会社であるウーブン・アルファの自動地図生成プラットフォームチームと協働する。CARMERAの知見を生かすことで、道路や車線、信号、道路標識などの変化点を、ほぼリアルタイムで地図に反映できるようになる。これによって高精度地図の開発が進展し、商業化への移行が加速する。