出力制御の抑制に「負の価格」導入を、再エネ規制総点検タスクフォース

内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」は6月29日、深刻化する再エネ出力制御の抑制策として「負の価格」の導入を提言した。これに伴って「優先給電ルール」の廃止も求めた。経済産業省は年内に結論を出す考えだ。

日本では、太陽光発電や風力発電などの拡大に伴い、再エネの出力制御が頻発している。地域は東京を除く全国8エリアに広がっており、九州エリアでは2023年度に再エネの出力制御率が4.8%になる見込みだ。東京エリアでの実施も時間の問題となっている。タスクフォースは、燃料費高騰で電気料金が値上げされている中で、燃料費のかからない自然エネルギーが抑制さている現状は、消費者利益に反すると主張した。

 

低価格時間帯の需要創出に期待

「負の価格」(マイナス価格、ネガティブプライス)は、供給過剰時に電力の市場価格をマイナスにする制度だ。発電事業者は、発電するほど金銭を支払うことになるため、発電を抑制する効果が見込める。需要家は、逆に金銭を受け取ることになるので、電気を利用する動機が働く。これによって蓄電池事業や電力需給調整ビジネスの発展が期待できる。

(出所)内閣府「第27回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」

優先給電ルールは、長期固定電源(原子力発電、水力発電、地熱発電)に発電継続を認める仕組みだ。発電量が需要量を上回る場合に、まず火力発電の出力を抑制し、揚水発電の運転で需要を創出。次に、地域間連系線で他エリアへ送電する。それでも発電量が需要量を上回るときには、バイオマス発電の出力を制御し、さらに、太陽光発電、風力発電の出力制御を行う。長期固定電源は出力を短時間で調整することが難しく停止や起動にコストがかかるため、最後に抑制する。こうした優先給電ルールの存在が、再エネの出力制御を招いているとの指摘だ。

経産省も出力制御対策の検討を重ねてきた。短期対策として発電設備のオンライン化や火力発電の最低出力引き下げ、蓄電池やヒートポンプによる需要創出などを挙げている。「負の価格」などの価格メカニズムによる需給調整は、地域間連系線の増強と共に中長期対策の位置づけだ。「負の価格」の導入によって、既存の発電事業の収益が変わる可能性があり、市場関係者に大きな影響を及ぼすことから、慎重に議論を進めたい考えだ。

 

FIT見直し意見も

タスクフォースは、FIT(固定価格買取制度)電源のFIP(卸市場価格に連動して補助金を付与する制度)化を促すために、「新FIP制度」の創設も提言した。FIT電源は供給過剰時に発電を停止するインセンティブが働かないため、出力制御の一因となっている。新FIP制度では、負の価格時に現行のFIP交付金の10分の1程度を与えたり、併設する蓄電池に十分な補助金を与えたりすることを例示した。

FIT制度の見直しについては、経産省のワーキンググループでも意見が寄せられている。出力抑制が予想される春秋は電力を買い取りを止め、その分を夏冬に、より高く買い取ることで補填するというアイデアだ。買取価格を一方的に引き下げる遡及的な変更は事業の予見性を損ない、訴訟に発展する恐れがあるが、マイマスを補うプラスを設けることで、一方的な不利益を回避できるという考えだ。

 

グリーン/エネルギーの最新動向は、月次レポート「インフラ・グリーン・デジタル投資動向」で逐次、解説しています。

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