ANAホールディングス(ANAHD)は2022年2月、日本国内における電動垂直離着陸機「eVTOL」(electrical Vertical Take Off and Landing)による運航事業の共同実施の検討に関する覚書を、eVTOLの開発事業者である米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)と締結した。覚書には、地上交通における連携などを想定し、Joby Aviationに約4億米ドルを出資しているトヨタ自動車も加わる。
eVTOLは、電動モーターで複数の回転翼を回転させ、垂直に離着陸する小型航空機を指す。「空飛ぶクルマ」とも称され、渋滞の緩和や温暖化への対策など、新たなモビリティ(エアモビリティ)として世界各国で開発が進んでいる。電動であるため、低騒音で排気ガスがゼロだ。JobyのeVTOLは5人(パイロット+4人)乗り仕様で、最大航行距離150マイル(241㎞)超、最高速度200mph(時速321km)。例えば、大阪駅から関西国際空港までの31マイル(50 km)の移動が、車で1時間のところ、航空機だと15分以内で可能だ。
今回のパートナーシップに基づいて、ANAHDとJobyは、国内大都市圏を中心とした移動サービスの実現に向けて事業性調査、旅客輸送サービス実現に向けた運航・パイロット訓練、航空交通管理、離着陸ポートなどの地上インフラ整備、新たな制度・法規への対応など、さまざまな側面での検討を共同実施していく。地上交通との連携では、トヨタ自動車も参加して検討を実施する。
ANAHDは、eVTOLを用いた都市型航空交通の実現を目指し、その第一歩として2025年の大阪・関西万博を起点とした関西圏での運航の実現を目標としている。
Joby Aviationは2024年に、米国でエアモビリティサービスの提供開始を目指す。2009年の会社設立以来、1000回超のテスト飛行を完了しており、航空機の耐空性基準を定めた連邦航空局(FAA)のG-1認証基準に署名した最初のeVTOL企業だ。2021年8月には、ニューヨーク証券取引所に上場。カリフォルニア州のサンタクルーズ(本社所在地)、サンカルロス、マリーナから、ワシントンDC、ドイツのミュンヘンへと拠点を広げている。